認知症になってしまっても家族信託はできますか?
家族信託は委託者と受託者の間での契約行為ですので、契約の内容を理解し、判断をする能力が必要となるため、認知症の方は家族信託はできません。ご高齢の方は、入院や施設への入所などをきっかけに急速に認知症の症状が進むことも多いですので、お元気なうちから対策をご検討いただくと安心です。
要介護認定を受けていると家族信託はできないですか?
要介護認定は、認知機能の低下だけでなく身体的な障害も含めて判定がされるものですので、要介護認定を受けていたら家族信託ができないとは一概には言えません。要介護認定は一つの判断要素とはなりますが、家族信託ができるかは、契約内容を理解し、判断することができるかで判断されます。
手続きを依頼してから完了するまでどのくらいの期間がかかりますか
それぞれのケースによって異なりますが、およそ1か月~3か月ぐらいの方が多いです。どの財産を誰に信託するか、受益者代理人や第二受託者を置くかなどが比較的早くお決まりになれば、1か月程度で信託契約の締結から信託登記の申請、信託口口座の開設まで完了するケースもあります。
どのような財産が信託できますか
現金、不動産、株式、投資信託等の財産的価値のあるものであれば信託することが可能です。ただし、上場会社の株式や投資信託などは、すべての証券会社が家族信託に対応した口座開設の取扱を行っている訳ではないので、事前の確認が必要となります。
受託者が死亡したらどうなりますか?
受託者が亡くなった場合、信託契約で第二受託者を定めており、第二受託者が就任を承諾すれば、その方が受託者となり信託事務を引き継ぐことになります。信託契約において、新受託者を定めていない場合は、委託者及び受益者が新たな受託者を選ぶことができます(信託法62条1項)。どうしても受託者が選任できない場合は、利害関係人の申立てにより裁判所に選任してもらうこともできます(信託法62条4項)。受託者が死亡した後、新たな受託者がいない状態が一年間続くと信託は終了してしまうので注意が必要です。
なお、信託契約に定めておけば、受託者が亡くなった場合に信託を終了させることも可能となります。
受益者代理人とは何ですか?
受益者代理人は、受益者に代わり、受益者のために意思決定を行ったり、受託者を監督したりする人です。実務上多いのは信託契約の変更かと思われます。家族信託を継続していく中で、状況により信託契約の変更が必要となった場合、信託契約で「受託者と受益者の合意で信託契約を変更できる」と定めていても、受益者の判断能力がなくなってしまうと信託契約は変更できなくなってしまいます。受益者代理人を定めておけば、受益者が認知症になってしまっても、受益者代理人と受託者で信託契約を変更することが可能となります。
受益者代理人は、信託契約時に指定したり、選任方法を定めたりしておく必要がある点、受益者代理人が選任されると受益者の権利行使が制限される点は注意が必要です。
家族信託をしておけば、遺言を残す必要はないですか
信託契約では、信託が終了した場合に信託財産を誰に帰属させるかを定めることができ、遺言と似た機能をもたせることができます。ただし、帰属先を指定できるのは信託財産に限られますので、信託財産以外を誰に相続させるかを定めたい場合は、家族信託の他に、遺言を残しておく必要があります。