2024年10月05日

家族信託の受託者を一般社団法人に?法人を受託者にする注意点などを解説

家族信託の受託者を一般社団法人に?法人を受託者にする注意点などを解説

家族信託では委託者や受託者、受益者といった当事者を設定しなければなりません。その当事者のうち受託者については、個人ではなく法人にすることを検討している方もいるのではないでしょうか。今回はそうした受託者を法人にする際に気を付けるべき注意点などについて解説していきましょう。

家族信託の受託者を法人にする際の注意点

家族信託の受託者を法人にする場合は、どのような法人でも受託者に設定できるわけではありません。法人にする際には注意するべき点もあることから、しっかりと確認を行うようにしましょう。それでは法人を受託者にすることを検討する上で注意すべき点について解説していきます。

一般社団法人であることが理想的

受託者を法人にする場合は、信託法上その法人が非営利目的の組織であることが望ましくなっています。そのため非営利団体である一般社団法人を、財産管理法人として設定することが最も理想的です。

株式会社や合同会社では条件を整える必要がある

受託者としての法人は、かならずしも一般社団法人でないといけないわけではありません。本来営利目的の組織である株式会社や、合同会社であっても受託者として設定できる場合もあります。ただし信託業法上、不特定多数の者に対して営利目的で信託の締結を行う、信託業を行う場合は許可を得る必要があります。そうしたことから受託者に指定する株式会社は信託業の許可を得なければなりません。

しかし家族信託の場合、会社を受託者に指定してもその会社が親族のみで経営されている企業である場合、営利目的の信託であると考えるのが難しいのも事実です。そのため株式会社であるからといって、信託業の許可を得る必要があるかの判断は難しい一面もあります。そうしたことから株式会社や合同会社を受託者にしたい場合は、司法書士などに相談するようにしましょう。

受託者を法人にした際のメリット

受託者を一般社団法人などの法人にした場合には、個人にはないメリットも存在します。受託者が法人である場合に得られるメリットについて解説していきましょう。

受託者の不在のリスクが低い

家族信託では、親が認知症などの病気なった場合や死亡した場合を想定していることが多くなります。しかしかならずしも親が先に他界するわけではなく、子どもが病気になったり不慮の事故で死亡したりする可能性も少なからずあるのです。そうした場合子どもが受託者であれば、受託者不在の状態になり財産の管理を行う者がいなくなってしまいます。また受託者不在が1年以上続くと信託が強制的に終了してしまうという事態も起きるのです。

しかし法人を受託者にした場合は、その法人が存在し社員もいる限りは、信託を継続することが可能になります。受託者とする法人内に、信頼できる複数人の親族を入社させていれば、誰かに不測の事態が起こっても対応できるのが法人の強みです。

委託者が健康なうちは信託運用に加わることも可能

受託者を法人にした場合、財産の管理を法人として行うことになります。そこで法人の方針を決める際は、多数決の議決によって行うことも可能です。受託者を法人にした場合は、委託者自身もその法人の役員などに加われることから、法人の方針決定に加われます。そうしたことから委託者の認知症などに備えた家族信託であっても、判断能力が正常である間は、自身の財産の管理に携わることもできるのです。

受託者変更手続きの手間が省ける

受託者が個人である場合、受託者の変更をした際は、信託財産の名義変更などの手続きを行う必要があります。しかし法人である場合は、受託者の法人に変更がない限りは、法人内の役員などの変更を行うだけで実質的に受託者の変更が可能です。そのため個人では必要な名義変更などの手続きを行う必要がなく、手間を省くことが可能になります。

受託者を法人にした際のデメリット

受託者を法人にした際は、メリットばかりではなくデメリットも存在します。受託者を法人にした際のデメリットについて解説していきましょう。

法人関係の費用がかかる

受託者を法人にした場合は、個人ではかからない費用が発生する場合もあります。たとえば受託者を法人にするために、新たに一般社団法人などを設立した場合は設立費用が必要になります。また法人である以上は法人税などが必要になることもあるのです。

社員の選別には注意が必要

受託者を法人にする場合は、その法人に在籍する社員などの人選は慎重に行う必要があります。法人の方針を決める際に、悪意を持っている者などがいると法人で行う財産管理に、支障をきたす場合もあるので注意が必要です。

法人内で紛争が起きた場合に財産管理に影響が出る

受託者として指定した法人内で、もめごとなどが発生した場合、法人としての機能が停止する可能性もあります。法人としての機能が停止すると財産管理も停止する可能性があるため、注意が必要です。

まとめ

受託者を法人にするか否かについては、メリットとデメリットを比較しながら判断することが大切です。委託者の財産を適正に運用管理するために、最適な方法を検討するようにしましょう。

「横浜の家族信託なら播司法書士事務所」では、多角的な視点でお客様に適切な助言を行うように心掛けています。さまざまな状況を想定した家族信託の設計を提案いたします。ぜひともお気軽にご相談ください。