2024年08月20日

家族信託で定める必要のある3者とは?委託者の権利などと共に解説

家族信託で定める必要のある3者とは?委託者の権利などと共に解説

近年は、家族信託を万が一の状況に備え、財産管理のひとつとして検討される方もいらっしゃいます。家族信託を行う際は、信託法という法律をもとに財産管理を行うことになりますが、財産の持ち主である「委託者」を中心に、管理などの役割を持った当事者を定める必要があるのです。それでは今回は、家族信託で定める必要のある3者と委託者の権利などについて解説していきましょう。

家族信託で定める必要のある3者

家族信託では、「委託者」を含めて「受託者」と「受益者」という3つの役割などを持つ、当事者を決める必要があります。それぞれの役割などについて詳しく解説していきます。

委託者

委託者は、財産の持ち主となります。家族信託では、親になることが多いでしょう。委託者は、自身の財産の管理や処分方法などを細かく具体的に契約により決定します。信託する財産の量や範囲も委託者の意向に合わせて決定することが可能です。信託する財産は、あくまでも委託者に所有権があり、管理のみを信託契約により定めることになります。

受託者

受託者は、委託者との契約で、委託者の財産管理を行う者になります。家族信託では、委託者が親で、受託者が長男や長女などが一般的に考えられる契約の形でしょう。受託者は、委託者との契約に基づいて財産の管理や処分を実行する立場にあります。受託者には多くの権限は与えられますが、善良にして忠実で公平に管理を行う義務など、さまざまな責任が課せられます。

そのため、受託者であるからといって、自身の勝手な判断で財産を扱うことは許されません。例え委託者と親子関係であったとしても、委託者との間に締結された契約事項に違反する行為は許されないため、信頼できる責任感のある人物が望ましいでしょう。

受託者を複数人にすることも可能ですが、権限行使に受託者過半数の意思の一致が必要になります。そのため、受託者同士の意思に食い違いが生まれて権限行使が不可能になる場合もあるので注意が必要です。また、未成年者は受託者にすることはできません。

受益者

受益者は、財産による利益を受ける者です。信託財産に設定した賃貸物件からの賃貸収入や、持ち株の配当金などを委託者本人が受け取る場合もあるため、委託者も受益者になりえます。家族信託では、委託者の意向に沿って子供や孫、知人など、さまざまな人が受益者になる可能性はあります。ただし、受益者が受託者と完全に一致する状況になった場合は、1年間で家族信託の効力はなくなるため注意が必要です。

必要がある場合に任意で設定する当事者

家族信託では、上記の3者以外にも必要がある場合に設定できる当事者がいます。受託者の管理などを監督する「信託監督人」、誕生前の子供などの代わりに受益者の権利を管理する「信託管理人」、受益者が幼児などの場合にすべての権利代行が行える「受益者代理人」などです。これらの当事者は、信託の内容によって設定するとよいでしょう。

委託者の権利

委託者は家族信託の期間や条件など、信託のさまざまな事項を設定する立場にあるため、契約後にも多くの部分で権限を有しています。信託法では、委託者の権利に関する条文は多くありますが、その中でも大きな部分にのみ焦点をあてて解説していきましょう。

信託事務処理状況の報告請求の権利

委託者は、信託財産の所有者となり、管理状況などを監視と監督する権利を有しています。そのため、管理や処分状況、帳簿の開示などの報告を請求できる権利があります。受託者は委託者から請求があった際は、信託の状況を報告しなければなりません。

信託に関わる人事の権利

家族信託には、受託者や受益者などが存在し、それ以外でも監督人などの設定も可能です。委託者は信託の設定者になるため、信託契約後にも、それぞれの人物の選任や解任を行うことが可能です。しかしながら、信託契約後の選任や解任には家庭裁判所への申し立ての手続きが必要になります。

信託の設定変更の権利

委託者には、信託の設定内容を変更する権利があります。受託者などが信託契約後に管理に不都合な部分などがあった際、信託の本来の目的に反しなければ自身で変更可能な場合もありますが、基本的に委託者の承諾なしに変更を行うことはできません。信託の変更を行う際も家庭裁判所への申し立てが必要です。

その他の権利

委託者は、他にもさまざまな権利を有しています。ひとつの例として、信託法には明確な条文の記載はありませんが「指図権」という権利があります。指図権は、自社株の管理は受託者に任せているが、議決権は委託者が所持する場合などに行使される権利です。この場合、受託者は、委託者の指図によって議決権を行使することになります。

委託者が健康なうちに家族信託の検討

家族信託は、委託者である親の認知症などに備えて柔軟な対応ができるようにするために行うケースが多いかと思います。しかしながら、家族信託を行うには、委託者と受託者に「意思決定の能力」が必要不可欠です。認知症などの病気は、突如発症することもあるため、早めに信託契約を検討しておく方が安心でしょう。

また、信託財産の設定や税金関係など家族信託を行うには、多くの検討事項があるため、当事者が健康で余裕のあるうちに信託設定を行うことが大切です。

まとめ

家族信託は、委託者の意向をしっかりと反映した信託内容を設定することで、将来的なトラブルを回避することも可能です。万が一の状況に備えて、法律に沿った適正な家族信託を検討しましょう。

「横浜の家族信託なら播司法書士事務所」では、豊富な知識と確かな実績に基づいて、信頼性のある司法書類の作成を行っています。お客様に寄り添った対応により、それぞれのご家庭に最適な家族信託を提案させていただきますので、ぜひご相談ください。