2024年04月20日

家族信託の効力はいつから?契約ごとの条件や注意点を解説

家族信託の効力はいつから?契約ごとの条件や注意点を解説

2006年(平成18年)に改正され翌年2007年から施行された家族信託制度ですが、2024年現在は非常に需要が高まっています。親の認知症対策で子が始めることの多い家族信託ですが、法律に則りその仕組みは非常に難しいものです。「家族信託の効力っていつからなの?」と疑問に思っている方はぜひこの記事を最後までお読みください。この記事では家族信託の効力がいつから発生するのか契約ごとの条件や、注意点を解説していきます。

家族信託の効力が発生するのはいつから?

家族信託の効力は原則「信託契約を締結した時から発生」するものです。しかし信託契約の内容によっては始期契約や停止条件付き契約など、効力の発生時期が異なります。以下で詳しくご紹介します。

家族信託の「始期契約」

家族信託の契約書において「◯年◯月◯日より効力を発生させる」といったように明確な始期を決定しておくことが始期契約です。最初から始期を定めておくことで、本来契約締結時が効力発生時期であるものを、始期到来時にできます。

どのような場合に効果的であるかというと、賃貸などの不動産が信託財産である場合です。この場合は月中が効力発生時期になってしまうことで、日割り計算などの手間が発生します。効力発生時期を◯年◯月1日と定めることで、日割り計算という手間を省けるのです。

家族信託の「停止条件付き契約」

家族信託において効力が発生する時期に条件をつけることを、停止条件付き契約といいます。たとえば「委託者が死亡した時に効力が発生する」といったものや「委託者が認知症になったら効力が発生する」といったものです。

本来は契約締結時にその効力が発生する家族信託ですが、場合によっては「始めから財産を子どもに任せるのは心配だ」という親の気持ちがあるものです。始期契約や停止条件付き契約は、このような場合に効力の開始時期を遅らせられるというメリットがあります。しかし効力の発生時期を遅らせることにはデメリットもあります。

家族信託は認知症が始まってからでは遅い

「委託者の認知症が始まってから効力を発生させる」といった条件をつけられる停止条件付き契約ですが、実は認知症が始まってからでは遅いといわれています。認知症の判断基準と合わせて、遅いといわれる理由について解説します。

認知症の判断基準とは?

認知症とは一度正常に発達した認知機能が老化により後天的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態をいいます。認知症には程度がありますが初期に起こる症状は以下の通りです。

  • 記憶力が低下する。
  • 認知能力が低下する。
  • 記憶力や認知能力の低下により日常生活に支障をきたしている。
  • 情緒易変性、易刺激性、無感情、社会的行動の粗雑化のどれか1つ以上の症状がみられる。

せん妄状態のエピソードが重なっている場合には認知症の診断は保留とする。

これは日本神経学会により定められている基準ですが、認知症の発生時期を明確に示すことは難しいといわれています。実際に「認知症の発生時期」を条件とした場合、周囲の家族が「認知症だ」と疑っていても本人が「まだ認知症ではない」と認めない場合があるのです。

こういった事態を防ぐためには「認知症になったら」という曖昧な条件ではなく「医師に認知症と診断されてから」など明確な条件を検討することが重要になります。

認知症が始まってからでは遅い理由とは

親が認知症になってしまうことを不安視して、家族信託を検討する受託者(子)は多くいます。しかし実際に認知症が始まってからでは遅い理由があるのです。家族信託の効力が実際に発生した後は信託財産となっている不動産の名義変更や、受託者の信託口口座へ金融資産の送金といった手続きが必要です。しかし、この時点で委託者の判断能力が欠如している場合、不動産の登記手続きや信託口口座への送金・移管手続きはできません。

上記のことを簡単にまとめると「認知症などによって委託者の判断能力が欠如した場合、効力発生後の手続きができなくなる恐れがある」ということです。手続きができなくなる事態を防ぐためには、契約締結時になるべく近い時期に効力発生時期を定めることがポイントです。

追加信託のメリットとは?

受託者側が委託者の判断能力欠如を恐れ、早めに効力が発生することを望んでも委託者が認めないケースもあります。大きな財産の相続になる家族信託では、自分が元気なうちに全財産を子どもに任せることが不安だと感じる親は少なくありません。このような場合におすすめなのが追加信託という方法です。締結時に定めた財産に、信託期間中に後から財産を追加できるのが追加信託です。

このように一度に全ての財産を家族信託するのではなく、少量の財産からスタートさせて後日追加信託を行うといった方法もあります。効力の発生時期を調整できる家族信託ですが、遅らせることには少なからずデメリットがあります。まずは家族で話し合い専門家に相談することで、適切な家族信託を行うことができるのです。

まとめ

家族信託はいつから効力が発生するのか、契約ごとの条件や注意点について解説しました。始期契約と停止条件付き契約というものが家族信託にはあり、効力が発生する時期を契約提携時に決められます。停止条件付き契約では委託者が認知症になってしまった場合など細かな規定を定められますが、委託者の判断能力が欠如するとその後の手続きができなくなるといった注意点についても説明しました。後からトラブルが発生しないためにも契約を締結する前に、しっかりとご家族間で話し合うことが重要です。

神奈川県にあります「横浜の家族信託なら播司法書士事務所」では、ご家族の中立の立場として、委託者と受託者双方にご納得いただける家族信託をご提案します。法律に則り進めていく家族信託は難しい契約のため、豊富な知識を活かし最適なアドバイスをわかりやすく、丁寧に行います。家族信託をご検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。