2024年08月05日

家族信託で委託者が死亡したらどうなる?継続できるのか契約内容ごとに解説

家族信託で委託者が死亡したらどうなる?継続できるのか契約内容ごとに解説

資産凍結の対策として注目されている家族信託ですが「家族信託で委託者が亡くなってしてしまったら、その後家族信託はどうなるのか」と、亡くなった後のことが気になる方もいるのではないでしょうか。実は家族信託の内容によって、継続できるか清算結了となるかは変わってきます。

今回は、家族信託で委託者が亡くなってしまった場合、家族信託の地位や継続がどうなるのか契約内容ごとに解説していきます。疑問に感じている方は、ぜひ最後までお読みください。

家族信託は委託者が亡くなってしまった場合どうなる?

「信託契約」と「遺言信託」が家族信託にはあり、地位が相続されるかどうかは、その契約内容によって異なります。遺言信託は遺言に信託契約に関する内容を、委託者があらかじめ記します。遺言信託は委託者の死亡によりその効力が発生するものです。そのため遺言信託では、委託者の死亡が理由で地位が相続されることはありません。

家族信託と遺言信託の違い

遺言信託で地位の相続を行ってしまうと、相続人が亡くなってしまった場合、さらに相続人に地位を相続する必要があり、非常に複雑な法律関係になってしまうからです。また、相続人と受益者の間に利害関係が生じる可能性もあることから、遺言信託では委託者の相続を行わないことになっています。

一方信託契約では、委託者が亡くなってしまった場合、地位を相続するかどうかをあらかじめ決められるのです。委託者の死亡によって複雑な法律関係になることを防ぐために、相続しないと定めることも可能です。また登録免許税方7条2項に基づき、委託者の地位を相続せず、受益者の地位と一緒に異動するものと定めておくと、登録免許税を課税する上で有利になるという考えもあります。

委託者の地位の相続についてなにも定めていなかった場合に、委託者の相続人が権利を主張してきてトラブルにつながる可能性があるのです。こういったトラブルを防ぐために「委託者の地位を受益者の地位と一緒に異動させる」ということを検討するとよいでしょう。

遺言信託の種類

遺言信託には同じ言い方でも、内容がまったく異なる2種類の遺言信託があります。

  • 法律上の遺言信託
  • 信託銀行における遺言信託といった商品

前述した遺言信託は、法律上の遺言信託における地位の相続についての内容です。銀行の商品サービスである遺言信託というイメージを持っている方も多いのですが、まったく別物の信託法で定められた遺言信託があります。「遺言」は委託者が無くなる前に「財産をどのような形で誰にどのくらい相続するか」を示すものです。しかし遺言を紛失してしまった場合は、その内容は無かったことになってしまいます。また遺言は委託者が亡くなった後に改ざんされる可能性もあるため、トラブルに発展する可能性が多いことも事実です。遺言信託は委託者である父が「自分が亡くなった場合、息子を受託者として私が所有する財産や不動産を信託する」とあらかじめ定めておきます。そしてその委託者である父が亡くなってしまったときに、その効力が発生する信託方法です。

一方金融機関の商品である遺言信託は、遺言書を作成する際のアドバイスや遺言書の保管、遺言書の執行を依頼できるサービスです。法律上の信託ではないため、委託者や受託者、受益者という存在はありません。家族信託を行う場合は、法律における遺言信託と信託銀行の商品サービスである遺言信託について、違いをしっかり理解することが重要です。

家族信託で委託者が死亡した場合の手続きとは?

委託者が亡くなってしまった場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。その手続きは信託終了理由を「委託者の死亡」として定めていた場合と、そうでない場合により変わります。委託者の死亡を信託終了理由にしていた場合は、清算手続きを行うことになります。一方で委託者の死亡が終了理由でない場合は、家族信託の継続が可能です。継続するために委託者の変更手続きをする必要があるのです。

清算手続きとは、実際に信託財産を帰属権利者に引き渡す流れをいいます。この際委託者の地位は、基本的に相続人が取得することになるのです。帰属権利者が地位を取得する定めがある場合は、帰属権利者が取得することになります。契約時の定めによって変わるので注意が必要です。

清算の流れは清算手続き完了後、最終的には帰属権利者に信託財産を帰属します。この帰属権利者は、契約の際に指定されていることが一般的です。信託契約の際に決めていない場合は、このタイミングで法律に基づいた形で決定することになります。不動産は登記の移転などの手続きが必要となるため、必要書類の準備や申請を行う必要があるのです。スムーズに移転手続きを行うためにも、適切な専門家に依頼することが重要になります。このようにして清算手続きが結了すると、委託者の地位が消滅することになるのです。

委託者の死亡を終了理由としていない場合は、死亡後も家族信託が継続すると説明しました。この場合は、委託者の地位や財産の管理などは継続することになり、家族信託で決定した者が委託者や受益者の地位を取得する運びとなります。その際に委託者・受益者双方の変更手続きが必要です。また、信託口口座を使用し財産の管理をしている場合は、金融機関への報告も忘れてはいけません。信託内容の更新が必要な場合もあるので、必ず金融機関に連絡するようにしましょう。

まとめ

この記事では家族信託の委託者が亡くなってしまった場合に、家族信託は継続されるのかを契約内容によって解説しました。そもそも家族信託には「信託契約」と「遺言信託」があります。信託契約は地位を相続するかどうか契約時に決められ、遺言信託は地位を相続できません。また委託者が亡くなってしまった後も家族信託を継続できるかは、信託終了理由をどのように決定しているかによって異なります。法律が関わる家族信託は、契約の際に確実に手続きを行う必要があります。司法書士など家族信託に強い専門家に頼むことで、後々のトラブルを避けられるでしょう。

神奈川県横浜市にあります「横浜の家族信託なら播司法書士事務所」では、ご相談者様に寄り添い親切・丁寧なわかりやすいご説明を常に心掛けております。相続登記・遺産分割協議書作成・相続放棄申立・遺言書作成・遺言書検認の申立など、さまざまな相談実績を誇っている家族信託に強い司法書士です。家族信託でお困りのことがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。