施設入居費用を賄うため、空き家売却を行うにあたっての家族信託
施設入居の母の自宅売却
母の認知能力が低下して、自宅の売買手続きが難しくなることも考えられるため、安全を期して、今のうちに自宅を家族信託へ
相談者は50代後半の男性。父はすでに他界、親族は母と兄が1名。兄は数年前に脳梗塞を患い、要介護状態である。母は、相談者の自宅から車で1時間ほどのところに一人で自己所有物件に住んでいたが、80代半ばになり、一人で生活することが難しくなってきたため、2年前に高齢者施設に入居。
相談者は、月に2、3回、高齢者施設を訪れ、母とは良好な関係。施設の費用や自宅の管理費用は相談者が管理を任されており、相談者が支払いを行ってきた。しかし母の預貯金が少なくなってきたため、施設費用の確保や自宅の管理の手間や費用をなくすため、空き家となっている母の自宅の売却を検討、不動産業者に相談していた。
不動産業者の見立てでは売却までには数か月はかかる可能性があり、それまでに母の認知能力が低下して、自宅の売買手続きが難しくなることも考えられるため、安全を期して、今のうちに自宅を相談者に家族信託できないかという相談に来られた。
実際の対応内容
-
相談者と信託契約の内容について、打ち合わせを重ね、母名義の自宅は相談者に対して信託することにした。
-
まとまった金額の現金も信託して、信託口座から施設費用を支払うことも検討したが、施設費用は母名義の口座から自動引き落としになっており、その口座が年金の受取口座にもなっていたため、施設費用は引き続き母名義の口座からの引き落としで支払うこととし、資金が減ってきた際は、受託者が母名義の口座へ信託財産から入金するスキームとした。
-
信託された不動産が売却できた際の売却代金を受け取るための信託口座が必要となるため、現金1,000円を信託することとし、信託契約後すぐに金融機関で信託口口座を作成できるような内容とした。
お手続きの流れ
-
STEP.01
相談者とお打ち合わせ
実際にご相談にこられてから、お打ち合わせを重ね信託内容を協議しました。
-
STEP.02
受託者立会いの下契約書の作成
母は足が不自由で公証役場に赴くことが難しかったため、公証人とともに高齢者施設に伺い、公正証書にて信託契約書を作成した。
-
STEP.03
登記情報の変更
信託契約書に基づき、母名義の自宅を信託を原因とする、受託者への所有権移転登記を申請。
-
STEP.04
信託口口座の開設
母には施設から一時外出してもらい、金融機関に同行し、信託口口座の開設をサポートした。